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1995年 第20回個展 「Swing」    日本橋高島屋





ガッシュ ・ 紙 27.0×39.5cm





ガッシュ ・ 紙 46.5×66.0cm


中根明貴子さんの仕事 写真家 細江英公

 もうかれこれ25,6年前になろうか、ふと何気なく入った京都の京都書院画廊で開いていた展覧会で一枚の作品を買ったのが、中根さんとのおつき合いの始まりである。

 わたしは絵のコレクターなどではないし、まったく知らない画家の絵を旅先で衝動買いするなど、いままでには一度も経験したことはなかった。しかし、ひとの作品を買うことは感動的である。会場で声を交わしたのが若い美人の作者本人だったことも絵を買った理由のひとつだったが、やはり絵そのものがわたしにとって、奇妙な懐かしさと新鮮さが混ざり合った、矛盾する感情の不思議さを直感させてくれたこと、これが「その絵」を買った理由である。ところで「その絵」は、いまわが家のどこかにしまいこまれていて、箪笥の奥か箱の中か、あまりにも大事に扱われてすぐ取り出せないが、家のなかのどこかの秘所にあることは間違いない。

 「その絵」とは、30x30cmくらいの大きさの画用紙に60パーセントくらいの割合で鉛筆で朝顔の花を横から描き、ちょうどオッパイを横から見たような形で、オッパイでいえば乳房の部分にあたる朝顔の花の付け根の部分が色鉛筆でピンク色にぼかしたように描かれていた。まるで白黒写真が部分的に手彩色されたような感じである。このピンクがなんとも色っぽかった。わたしはとっさに「十三歳の少女の羞じらい」「少女が初潮をむかえた日」あるいはひょっとすると「初体験の処女の血」かな、などと初対面の中根さんには無遠慮な印象を語ったのがつい昨日のような気がする。

 それからしばらくして銀座の「画廊春秋」で中根さんの個展があった。こんどは油絵だったような気がする。その後、中根さんは「画廊春秋」やその他の画廊でほとんど毎年のように精力的に新作を発表しているが、その都度、作品の内容や技法が変化している。初めはやや戸惑いをもったが、それはわたしの見間違えだと気づいた。中根さんの仕事ぶりは、まるで複雑な美しい織物を織るように、その時の部分だけをみただけでは全体を見通すことができない。だからわたしは気長に時間をかけて待つことにした。つまり中根さんにとっては、毎回毎回の作品発表が実験であり、しかも、とびとびに織る織物の部分に、ときには絹を、ときには麻を、という具合に織っているので性急に全体を判断してはならない。作家の自由な精神とは、「油絵」であろうが「写真」であろうが、「陶板」であろうが「版画」であろうが、好きなことを好きなようにやるだけであろう。





ガッシュ ・ 紙


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